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谷川岳 一ノ倉沢 衝立岩 雲稜第一

2013/05/30 8:27 に Taro Inomata が投稿   [ 2013/06/03 7:25 に更新しました ]
触れる岩全てが浮き、落ちる岩は衝立沢まで音も無く落ちていく。
パリパりと剥離しきった上向きハーケンにセットしたアブミに、祈りながらそっと加重を掛けて、そんなプロテクション環境で10c並みのフリーと人工のミックス。
「もっかいウンイチいきたいんだよねー」と菅原さんのいつもの危険なアプローチから始まる悪絶の垂壁からご挨拶

2013年5月25日
菅原(L)、猪股(記)

話は去年からあったが天候悪く度々持ち越されてきた計画だった。正直、猪股はヒヨっていた。正直、中止となる度に安心していた。インターネットの記録を漁れば漁るほどロクな記録がない、落石、墜落、ビバーク、敗退。でも今回は逃げられない。体調も万全、天候もまぁ行ってみなければといった感じで、中止となる理由が無い。「菅原さん!今週はいけそうですね!」とTWALL後の中華屋で最後まで見栄を張った小男はその週の間後悔するのである。
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いつもどおり土曜17:52土合着で指導センターへ。菅原さんは一足早く到着していて既にロング缶3本転がしていた。指導センターではもう1パーティで宴会が始まっており、挨拶を交わしたらYCCとの事。TWALL仲間のMさんの知り合いというT氏もいて、また新たな縁が生まれた。その後、更に都連救助隊の中村さん(ぶなの会)ともバッタリ。この時期はよく知り合いが集まる。YCCパーティは土曜日中に登攀、そのまま撤収し、ぶなパーティは土合でステビして翌日中央稜との事。こちらも20:00就寝。
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2:30起床。3:30発。4:10一ノ倉沢出合。雪渓にビールを埋め出発。
今年は出合付近の雪渓の出来が不安定なようで、沢床が現れている所もあった。それ以降は例年通りの雪渓を歩く。
▲出合付近の雪渓の状態
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5:20中央稜取り付き着。身支度の上、ノーロープでアンザイレンテラスへ。(ロープ、あったほうがいいと思う)
6:00登攀開始
▲中央稜取り付きに荷物をデポし登攀準備
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1P目Ⅴ(猪股)ガイドブック通り、4,5m左へトラバースし、草付きの凹角を直上。プロテクションは非常に良好なリングボルト。凹角に入ったあたり1、2箇所間隔が遠いところがあるがカムがばっちり使える。抜け口の一、二手のためにⅤ級といった感じ。2人用テラスは縦横に大量のボルトが打たれていて、最も右にペツル2点、しかし2P目の落石を考えて最も左のボルトをビレイ点とした。
▲二人用テラスからアンザイレンテラスを見下ろす
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2P目ⅣA2(菅原)第一ハング。こちらもガイドブック通り、ビレイ点から少し左の凹角から大きく弧を描くように右上。噂に聞く通り、ハング下まで全ての岩が浮いていて、思い切ったムーブは絶対出来ない。トップが登ってる最中、慎重に登っていても2回の落石あり、頭上をかすめる。第一ハングを超え更に直後の小ハングを超えて終了点。
プロテクションの間隔に無理があるようには感じないが、やはり風化が激しい。下から見てて「あ、いけそうだなー」と思ったのは撤回。猪股すっかり意気消沈。登攀中、テールリッジの中村の兄さんからコールが飛んできた。
▲左の凹角を登る。写真上のトップの辺りまでプロテクションは無い。カムが使える。

▲第一ハング

▲フォローにて第一ハングの様子

▲第一ハングから迫力の衝立沢

▲第一ハングを越えた直後。第一ハングと小ハング間は割とマシなボルト。これを越えるとビレイ点
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3P目ⅣA2(菅原)第二ハング。「太郎君時間掛かるからダーメ」令発動により菅原さんトップ継続。ビレイ点の凹角を直上した後右上し、第二ハングを頭上に、右の側壁からカンテ沿いにこれを越える。序盤の凹角が終わる辺りのピンが遠かった。思わず残置のスリングを使う。フォローとはいえビリビリ音を立てていく細引きに肝冷やす。(トップの菅原さんは使わなかった)
▲3P出だし

▲右上気味に進む

▲第二ハングを頭上に、その側壁を越える。
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4P目ⅣA1(菅原)核心ピッチ。ビレイ点から細いクラック沿いに4m程薄被りを直上し、小さな張り出しを頭上に左のバンドをトラバース。トラバースに入る辺りは割と広いスタンスではあるが外傾していて使いづらい。トラバース後、草付きのコーナーを直上し数mでビレイ点。トップはこのコーナーで1回ピン抜けでフォール。スタンスが取り辛く、スメアを効かせたいのに、アンダーのフレークは剥がれそう。
▲4P出だし。クラック沿いのハーケンを辿る。

▲4P出だしのクラックを直上。薄被り。

▲写真中央の草付き目指して左上
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5P目ⅣA2(猪股)第三ハング。ビレイ点から凹角を2m直上しバンド状。ここで頭上の第三ハングに備えて一呼吸出来る。第三ハングは水気がありハーケンの腐食が酷い!指で擦るだけでパリパリと剥離して鉄粉と化す。このルート、どのピッチとってもプロテクション事情は悪いのだが、クラックも散見でき積極的にカムを使用する。ここでもあてにならないハーケンは無視してカムを多用する。第三ハングを乗り越すとチムニー状の凹角となり、ステミングで越える。ここは残置プロテクションが少ない。丁度良いサイズのカムも2本ハングで使ってしまった為、ナッツを使う。人一人座れる位のテラスに着いたが、それがボサテラスと思えず(本当はそれがボサテラス)、そのまま頭上の洞窟ハング目指してフェースから笹の凹角を10mくらい進む。ピッカピカのリングボルト3点に守られたビレイ点で切る。(結果的に40m)
フォローをビレイ中、ショックが掛かってなかなかテンションが抜けなかったので何かとおもったら、トップが決めたカムに乗り込んだら岩ごと剥がれたとのこと。体重差か?
(((写真撮るのスッカリわすれてた)))
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6P目Ⅴ(猪股)湿った凹角。5mほどステミングを交えて登り、途中左のフェースに出たりする。フェースから凹角に戻る1、2手がⅤ・・・・いやⅤ-くらい。洞窟ハングはひんやりして涼しかった。腰掛ビレイで快適。
▲6P出だし。チムニー状を直上

▲湿った凹角。洞窟ハングを目指す。
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7P目ⅣA2(猪股)洞窟ハング。もう一息。ハングというが、洞窟の側壁からカンテを回りこんで薄被りを人工。中ほどに真新しいリングボルトがあり安心できた。カンテを回りこみ薄被りのなかで、グラグラ指でゆれるハーケンがあったが、効き方向の為、そこそこ安心の加重で越える。15m~20mの短いピッチ。
▲洞窟ハングから

▲洞窟ハング中間部からビレイ点

▲7P目 抜け口
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8P目Ⅲ~一部Ⅳコンテ、菅原さんは全ヌンチャクを装備し出発。残り10m、8m、6、4、とカウントダウンが始まり余丁2m程でスタート。所々Ⅳ程のポイントがあるがあまり悩まず登る。トップが恐らく衝立の頭に着き、引き上げの体制になるとロープの手繰りは一層速くなり、もはや走った。ランニング後みたいに息を切らして衝立の頭にフォロー着。16:00。最後に巻きに巻いた。
▲8P出だしの凹角。

▲登攀ライン。赤が猪股、青が菅原、緑はノーロープ及びコンテ。
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下降は中央稜。18:20中央稜取り付き着。19:40一ノ倉沢出合着。
雪渓でキンキンに冷えたビールがめちゃうま!!翌月曜は予備日として休みを取っていたので、指導センターに戻って宴会再開。この日は朝も早く精神も疲弊してか、大して飲んでないのに酔いに酔った。何時とも知れない時刻に倒れて寝る。ドロのように。
▲うめぇー!

▲繰り返しビナとフィフィにはさまれて立派な血豆ちゃんができた。

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7:00起床。身支度して8:38土合発の電車で帰る。水上、高崎と乗り換えの度に給酒して月曜の昼間っぱらから泥酔して帰る。
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全ピッチ精神力を使うルートなんて初めてで、こんなとこトレースできるのか不安でならないが、
ウンイチ6回目(!)の菅原さんから「今回が一番悪かった」と感想が聞けただけ心が保たれた。
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