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甲斐駒ケ岳 Aフランケ 赤蜘蛛

2012/09/09 5:29 に Taro Inomata が投稿   [ 2012/09/09 8:19 に更新しました ]
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チャレンジアルパインのカラーページ、その写真のスケール感に惹かれて、なにより名前がカッコいい!そんなきっかけだったと思う。



2012/8/25-27 猪股太郎(記)、又平太郎(アルムクラブ)

■タイム
8/25(土) 
5:00竹字駒ヶ岳神社出発〜9:00五丈小屋跡着〜10:10七丈小屋着〜11:30八合目鳥居着〜11:50八合目岩小屋着
12:10偵察出発〜12:40八丈沢〜13:15Aフランケ赤蜘蛛取付き着
13:30取付き出発〜13:50八丈沢〜14:40八合目岩小屋着

8/26(日)
3:00起床4:30出発〜5:00八丈沢〜5:20Aフランケ赤蜘蛛取付き着
5:50登攀開始〜9:20大テラス発〜17:00Aフランケ頭の岩小屋着〜17:40八合目岩小屋着〜18:40七丈小屋テン場着

8/27(月)
6:00起床6:40出発〜9:40甲斐駒ケ岳山頂着
10:00山頂出発〜11:45双児山着〜12:50長衛荘着

■詳細
8/24(金) 新宿〜小淵沢
21:00新宿駅集合。菅原さんからチョンボ棒とジェットボイルを借り見送られる。予定より早い21:23?の中央線高尾行に乗車。高尾で乗り換える際に小淵沢行より先発の甲府行があり、少しでも早く着けばとそれに乗車するが、甲府に着くと結局次の小淵沢行きを待たされ本来の予定通り終電車となる。00:39小淵沢着。
駅前のタクシー営業所は明るく、3台が待機していた。計画ではステビバして早朝タクシーで竹字駒ヶ岳神社に向かう事にしていたが、朝は予約がいっぱいとの事で、夜の内に駒ヶ岳神社に向かう。20分くらいで到着。4,600円かかった。
※タクシーで行ける駒ヶ岳神社は2カ所あるらしく、行き先を伝える時は”竹字”を含めた方が間違いが無くてよいらしい。
駐車場に車は7、8台でテントが1張。我々も早々にテントを張り床に着く。

8/25(土)入山。駒ヶ岳神社〜(黒戸尾根)〜8合目岩小屋
4:30起床、5:00出発。予報では日中気温が35℃まで上がるという事で、朝の涼しい時間の内に高度を上げておくため休憩も少なめに行く。気温はそれほどでないのに日差しが非常に強くそれだけで暑かった。
思えば2011年夏に黄蓮右俣の沢登り、同年冬に同じく右俣のアイス。どちらも黒戸尾根にはバッキバキに痛めつけられて、下山の度に「こんなとこ二度と来るか!」と悪態をついたのだが、数ヶ月、1年と経つとその苦しみの記憶も薄らいでしまうのか、懲りもせずまたやられにいくのである。
▲竹宇駒ケ岳神社の駐車場。

▲刃渡り

▲五丈小屋跡

10:10七丈小屋着。汗だくだく。大休止。
七丈小屋では外の流し台の蛇口から冷たい水が流されていてがぶ飲む。頭からかぶる。キャッキャひとしきり水遊びした後、ビールを買い出しに行ったが主人が「まだ」と言葉少なに奥に入っていってしまった。「登攀具付きの夏の黒戸尾根」ということでザックの重量計算を綿密にして、”酒は七丈小屋で買うから担ぎ上げない”という計画が破綻してしまった。何と寂しい夜になるのか。するとマタローさんが「梅酒持ってきたよ」と。1gでも軽くしたいのにマタロさんあなたはスゴイよ!

一人3.5Lの水を補給して10:30出発。木々が薄くなりハイマツ帯に入ると日光がモロに当たって辛かった。11:35八合目鳥居跡着。ガイド通りそこからしばらく傾斜が緩くなり、次の急登直前で左(赤石沢側)の踏み跡に入って数mの所に岩小屋を見つける事ができた。11:50。岩小屋は表から見る以上に奥行きがあり、6畳くらいありそう。小休止。

既に体はガタついていたが、赤蜘蛛取付きまでに迷ってる記録も多数あり、また2人とも初めてのAフランケという事で十分に警戒してガチャとロープのデポがてら偵察に出発する。12:10。

岩小屋を背に左下に続く踏み跡を下降する。明瞭な踏み跡かもしくは視界の中どこかに赤布が捉えられた。また随所に現れるフィックスロープも真新しいものが多い。日中にこれらに導かれれば派手に迷う事はなさそうだった。

▲ハーケンの刺さった倒木


▲巨岩帯をフィックスロープで下降

▲青い真新しいロープが多い。

八合目岩小屋からの進路は凡そ左で、40分程で水の涸れた八丈沢に降り立つ。40m程下降し右岸に伸びる踏み跡を見つけて八丈沢を出る。八丈沢を出てからの全体的な進路は右で赤石沢方向となる。
▲八丈沢の下降

▲右に伸びる踏み跡から八丈沢を振り返る

▲出て踏み跡、赤布、フィックスに導かれる。



樹林が切れて視界が開けると右手に大岩壁となる。最初に現れる大スケールの岩壁に赤蜘蛛を探したくなりウロウロするが、目に焼き付けた赤蜘蛛の取付きらしい場所は無い。事前のマタローさんの調べでここは右フェースらしい。
▲樹林の先で開けると右手に大岩壁

更に奥に進むと、樹林の中にフィックスを見つける事ができた。そのフィックスを降りて100m程踏み跡を辿り、カンテを回り込むと、写真でよく見る赤石沢の岩壁とともに赤蜘蛛の取付きに到着した。13:20。八合目を出て約1時間の下降だった。

▲右フェースをスルーして更に下降

▲カンテを回り込んで視界に現れるAフランケ

▲赤蜘蛛取り付き

さて、岩小屋に帰るための鬼の登り返しである。まだ今日は終わっていない。
ロープやガチャを岩棚にデポし出発する。10ピッチのルートの取付きに来たのだから登り返しも同距離は当然なのだが、偵察という表現で油断したか、2人共わずかな水と行動食しか持ってきていなかったのですぐにシャリバテを起こした。ナメクジ並のスピードで登り返す。14:40岩小屋に戻る。
▲岩小屋

岩小屋に戻ると3人組のパーティ(以下Sパーティ)が夕食を準備していた。明日は我々と同様に赤蜘蛛とのことだが何とスーパークラックを登るというツワモノだった。ビデオも撮影するというのでお先にどうぞと、出発時間を打ち合わせ先行を譲って頂いた。
我々も夕食をとる。疲れ過ぎて喉を通らない飯を押し込む。そしてマタローさんが担ぎ上げてくれたミニペットの梅酒でささやかに乾杯。19時か20時か、早々に床に着く。夜中に目を覚まして空を見上げれば満点の星空。相変わらずオリオンしかわからん。

8/26(日)登攀
2:00頃から寒さで眠れず、うつらうつらと起床時間を迎える。3:00起床。防寒着のダウンを着ていたので上半身は大丈夫だったが下半身が冷えきった。30℃を超える下界とは全く別世界である。ゆっくり朝食と準備を済ませ4:30出発。前日の偵察の甲斐あって取付きに向かってまっしぐらに下降する。5:20取付き着。

▲朝焼け

▲右の踏み跡から八丈沢をでる

▲快晴のAフランケ


■1P 猪股
5:50登攀開始。自分には1ピン目のボルトの位置が絶妙で、アブミ最上段で2ピン目に届きそうで届かない(身長166cm)。ビナの頭を擦るのにゲートに入れられない。ハングしてるのでつま先を壁に押し付ける事ができず、かといって巻き込んでしまうと届かない。チョンボは使わなかったがケツを押してもらい突破する。その後は単調なA1。抜け口1、2手はフリーだがホールド&スタンスはある。
▲1ピン目

▲1P目終了点

▲1P目出口はフリー

■2P 又平
6:40。赤蜘蛛第一のハイライトであり第一の核心。コーナークラック(ジェードル)。ハンドジャムはバチに効くのだが自分はクラック慣れしてなくて足がメッチャ痛かった。耐えきれず時々レイバックに切り替える。まだまだ練習不足だ。うろ覚えだがカムはキャメ#0.5、#1.0サイズをを2、3本使っていたと思う。
Sパーティも追いつき、こちらと並行してトップが登り始める。メッチャ早かった。
▲2P目出だし

▲ハンドジャム バチ効きのクラック

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▲2P目出だしから1P目終了点のSパーティ

■3P 猪股
7:55。ハング下までの約20mの短いピッチ。コーナーから左の細いクラックを単純なA1。一本だけグラグラ動くハーケンがあるが、下方向への加重には耐えてくれそうで(くれるに違いない)、肝を冷やしつつもそっと立ちこみこれを超える。

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▲3P目出だし

▲3P目終了点

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▲この一つ下のハーケンがぐらぐら


■4P 猪股
8:40。6P目を頂くためトップを継続する。ハングは左からA1で回り込む。ハングを超えたら右手の薄被りの壁をA1。薄被りの壁を超えるとスラブ状になり左のコーナーに沿ってフリーで登る。突き当たりは薮で、直前にリングボルトが二本並んで打たれている。右への草付きトラバースがすごく悪そうに見えたので、薮のコーナーを直上した。草付きに爪を突き立てて騙し騙し体を上げ、灌木をまたいで右にトラバース。(実は直上&トラバースではなく、右の草付きトラバース&右上が正解??マタローさんに様子を見てもらった所、右の草付きトラバース中に1本ピン有りとの事)。薮をかき分けると前方7、8mに大テラスの太い灌木が見える。階段状の脆い岩をランナウト気味に登り、テラスに到着する。
※このピッチはハングを回り込むように超えて、更に右へ左へ振られるのでロープの流れに注意する必要あり。スラブに出たあたりで重いようならスラブ突き当たりの二本のボルトでピッチを切ってもいいかもしれない。

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▲ハング直下から見下ろす

▲ハング回り込みの様子

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▲ハング越え後の薄被りの人口から見下ろす

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▲薄被り壁からスラブへ。スラブはコーナー沿いに登る。

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▲4P目終了地点の大テラス。正面の灌木がビレイ点。


■5P 又平
取り付きはどこかと2人でウロウロしたがこれというポイントが見つからず、緩やかなコーナーの側壁に打たれたボルトラダーに取り付いてしまう。
そこに後続のSパーティが追いつき、「そこは違うよ。こっちこっち」と、もっと左の細い潅木と草の生えた凹角を教えてくれる。痛恨のミス!あれを登ってたらどこに行ってしまい、どこで間違いに気づいただろうか。白稜会は5P目は同じだし、恐竜カンテの右側に伸びてるようだったのでOCCルート?白い雲ルート?でもそれはもっと右っぽいし。
とにもかくにも仕切り直し。正式な5P目に取付く。10:20。凹角のコーナークラックを2m程上がり、スラブをカンテに向かって左上。カンテに出ると核心6P目の垂壁がドカーンと現れる・・・らしい。猪股がフォローで上がり始めたあたりでガスに包まれてしまった。
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▲こっちは誤り!


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▲こっちが正解。2mくらいのコーナーを登る。

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▲スラブからカンテに出たら右上

▲5P目終了点から見下ろす。ガスで真っ白に。

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▲5P目終了点と、そびえ立つ垂壁。

▲目つき悪いで!


■6P 猪股
核心且つハイライト。40mの垂壁に見事なクラックが走る。持ってきたガチャすべてを集結して取付く。しばらく細いクラックにピンが連続して打たれているが、10m程先の小ハングからは1、2本の間隔でピンが無いのでナチュプロエイド。ここのクラックは内部がボコボコしていてナッツの方がよく効いた(ナッツの方が効きが分かりやすかった)。
12:00終了点に到着。垂壁の完全なハンギングビレイ。幅広のハーネスで大正解だった。ヒューロンドスで来てたら腰が千切れてたと思う。
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▲ガスの流れが速く見る見る風景が変わる。

▲6P目終了点



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▲お疲れさん


■7P 又平
ボルト沿いに垂壁から恐竜カンテに乗り出す高度感抜群ピッチ。13:10。
ビレイ中、下からSパーティのトップが果敢にフリー混じりで登ってくる。
14:00フォロー開始。カンテに出てボルトラダーを上がる。抜け口は1手2手のフリー。14:40フォロー着。
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▲恐竜カンテのスカイライン

▲恐竜カンテから6P終了点を見下ろす

▲7P目終了点から恐竜カンテを見下ろす

▲7P目終了点。久々にハンガー。

■8P 猪股
14:50。7P目ビレイ点から階段上を2m程上がり、正面の巨岩の左を覗き込むと立派なビレイステーションが見える。しかしまだ10mもロープを延ばしてないし、その上にルートも続いてないので不思議に思いつつ巨岩は右を回り込む(後の情報でスーパークラックの終了点と思われる)。巨岩を回り込むと正面のスラブ壁にボルトラダー。A1で上がると樹林のテラスに出る。テラスからは右の草付きの階段状を登る。ロープの流れが悪くなりそうだったので適当な木で切る。15:25。
※ガイドブックだと8P以降は左上と書いてあるが、8P、9P、10Pと登った感じAフランケ頭の小屋までの進路はほぼ直上で、あえて左を意識しなくてもいいと思う。
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▲スラブ壁から巨岩を見下ろす。

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▲テラスから右の草付きを登り灌木帯でピッチを切る。

■9P 又平
15:45。ルーファイピッチ。草付きの中に2m程踏み跡が続き、左の土の階段状を登る。ごにょごにょ踏み跡を探し、適当な場所で切る。
▲土の階段状

■10P 猪股
16:20。不安に駆られながらももう間もなくだろうと2m程凹角を登り、ごにょごにょ。完全な樹林帯となり、踏み跡が明瞭になると突然岩小屋に突き出た。歓喜!フォロー揃ってAフランケ頭の岩小屋着17:00。
ちなみに、この岩小屋にエロ本が残置されているというネットの記録があったので念のため探してみたが見当たらなかった。

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▲こんな感じで岩小屋に突き上げる。

▲Aフランケ頭の岩小屋にて

続けてSパーティも無事到着。時間も時間なのでオリジナルルートだけにするとのこと。(我々がルート中で待たせてしまった故・・・)
しばらくおしゃべりの後、八合目岩小屋に戻る。17:40。
Sパーティは今晩も岩小屋泊との事でお別れ。我々は7丈小屋に降りる。18:40テン場着。達成感をつまみに乾杯したかったのだが、小屋は無人になっていてビールは買えなかった。残念すぎる!!全く酒に縁のない山行だった。
夜はやっぱり寒くて、ザックに足を突っ込んで寝たがやっぱり深夜には寒さで目が覚めてうつらうつら・・・。
▲7丈小屋テン場着

8/27(月)帰路
6:00まで爆睡。6:40発。折角だから甲斐駒ケ岳山頂を経由して北沢峠下山とした。3日目ともなってさすがにへばったが、所々谷から吹き上げる冷たい風に癒されてのんびり登る。
▲鶴の舞とか

▲ライオンキングとか

9:40甲斐駒ケ岳山頂着。幸運にも3日間好天は続き、このときも青空の山頂を踏む事ができた。

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▲甲斐駒ケ岳山頂


周りの人から黒戸程ではないと聞いていたので揚々に北沢峠の下山を開始したが、下山時も重量が全く変わらない20kgの装備で期待を裏切るアップダウンに魂を持っていかれる。これなら一辺倒な黒戸君の方がよっぽど真っすぐで誠実な奴だと思えた。ボロ雑巾になって12:50バス停となる長衛荘着。ここでやっと酒にありつけた。メッチャウマい!ポテトフライとたこ焼きも注文。メッチャウマい!バスが来る時間までグータラする。

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癇に障るアップダウン

▲たこ焼きうめぇ!

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▲グータラする 

15:xxの広河原行きバス(750円)乗車。広河原から甲府行きに乗り換え(1,900円)。予想外に高かった。18:40くらいに甲府着。文明の光に包まれて吉野家の牛丼食って帰郷。以上。



■ポイント
・アプローチ核心。要体力。
・取付きまでは赤布、踏み跡、フィックスが豊富だったが偵察は大正解。初見で夜明けの薄暗さでは道を外す可能性大。
・カムはキャメ#2~#0.3相当を約2.5セットを持ち上げたが2セットで十分だった。
・ナッツ1セットで適正
・ヌンチャク20本で適正(アルパイン10本、ノーマル10本)
・6P目のハンギングビレイは噂に違わぬ辛さだった。トップは6,7Pを継続するか、スリングでチェストハーネス風な背もたれや椅子が作れると楽かも。
・水は七丈小屋での汲み上げで正解
・下界が35℃でもやっぱり上は寒い。夜は10℃近くなるのでシュラフは3シーズンがいい。
・下界が35℃でもやっぱり上は寒い。テント正解。
・北沢峠はもうやだ。
酒は担ぎ上げる事!!
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