GW黒部横断

GW黒部横断(遠見尾根〜五龍岳〜仙人ダム〜雲切新道〜ガンドウ尾根〜八ツ峰主稜〜剱岳〜早月尾根〜馬場島)
[残雪期アルパインクライミング]
2023年4月29日〜5月4日
メンバー:YW、他1

4月28日(移動)
〈行程〉 21:00東京駅発(新幹線)〜22:20長野駅〜23:00KO家着
明日からのことを思うと、非常に憂鬱な気分である。計画通りに進めたとしても6日、予備を入れるとさらに3日と長期なことに加え、後半の天気が悪そうだ。現在の予報では、4月29日夕方~4月30日昼まで雨、その後は丸3日ほど行動できるが、5月4日夕以降は荒れ模様となっている。荒れる前に早月尾根の安全地帯に降りるには、真砂沢ロッジに5月2日夕までに着かなければならない。最悪の場合は、メインの八ツ峰と剱岳を捨てて、剱沢から室堂に逃げることをパートナーと共有し、白馬五竜スキー場で待ち合わせすることにした。
新幹線でひとり長野駅に着くと、杉並区から長野市に移住したKOさんが迎えに来てくれた。KO家では、楽しく酒を飲み、ブルーな気持ちも和らいだ。寝具を貸してもらえたため、自身の寝袋はドライな状態で山行に入れる。

4月29日(1日目)
〈行程〉 04:45KO家発〜08:30白馬五竜スキー場ゴンドラ乗車〜09:00アルプス平駅〜遠見尾根〜13:30五龍山荘着&幕
奇遇にも、KOさんは白馬鑓へBCスキーに行くとのことで、白馬五竜スキー場まで車で送ってもらった。感謝。パートナーは糸魚川で仮眠し、大糸線神城駅経由で到着。心持ちは同じらしい。リフトで上まであがる。トレースは割としっかりあり、雪質も歩きやすいが、初日、寝不足、重荷で、ペースが上がらない。遠見尾根はハイカーにも大人気のはずだが、夕方から荒天予報のためか、ほとんど登山者が入っておらず、すれ違ったのは数人ほど。五竜山荘前にちょうどいいソロテント居ぬき物件があったため、増築して入居。ドコモ、auともに電波が入る。氷化している層もあり、のこぎりを持ってきて良かった。この後も大活躍することになる。16:00からは予報通り、大雨となった。初日用にと、多めに担いだ酒とつまみで打合せをして就寝。

4月30日(2日目)
〈行程〉 11:30五龍山荘〜13:30五竜岳〜15:00東谷山〜18:30 Co1771m着&幕
06:30起床。強風、大雨、寒さにより、熟睡できず。防寒着を温存したが、思ったより冷え込んだ。11:00頃に雨が止み、撤収して歩き始めた。目標はCo1109mとした。五龍岳山頂前後は、足取りに気を遣う。Co2000m以下は、雪と藪が半々といったところか。藪と複雑な地形により、夜間行動は無駄が多くなると判断し、日の入りで切り上げる。Co1771mで幕。7hしか歩いていないが結構疲れた。ドコモ、auともに僅かに電波入る。予報は5/1昼から5/2朝まで雪だ。またも行動時間が制限される。一方で5月4日~6日夕までは好天に変化。これは非常に嬉しい。かなり気持ちが楽になった。当初より1日遅らせ、真砂沢ロッジに5/3夕までに到着すると、目標を変更した。

五龍山頂で雷鳥
4.30五龍山頂で雷鳥

5月1日(3日目)
〈行程〉05:00Co1771m〜08:15巡視道〜09:30黒部川横断(仙人ダム)〜10:00仙人沢渡渉〜10:30雲切新道トラバース終了〜12:30 Co1530m着&幕
昼過ぎから雪のため、明るくなると同時に歩き始める。昨日のものと思われる熊のでかい足跡が進行方向に延びており、アックス片手に大声を出しながら進む。下りのルーファイは標高差50mだけ尾根をミスった。トラバース復帰して約15分のロス。あとちょっとでノーミスだったのに悔しい。Co1109mからは、鉄塔を目指して歩く。黒部川が見えてきて、テンションが上がる。
午後から降雪とは思えない晴天で、とても暑い。鉄塔の広い基礎で、寝袋やテントを20分ほど乾かしつつ、黒部川と向かいの斜面を観察。S字峡に小さなスノーブリッジらしきものが見えるが、その他は繋がっていない。雪も少なく、ガンドウ尾根下部は藪で苦労しそうだ。仙人ダム横断で、雲切新道~ガンドウ尾根と決定した。
「黒部横断」と銘打つ山行で、横断のタイミングはやはり感慨深い。2人で記念撮影。その後、仙人沢の絶対に転べない裸足渡渉、雲切新道のトラバース~急登をこなし、Co 1530mで幕とした。テントインと同時に、みぞれが降り、夜には雪へと変わった。auは僅かに電波あり。変更目標であった5/3夕の真砂沢ロッジ着は前倒せそうだ。

5.1熊らしき大きな足跡

5.1鉄塔基礎でお店を広げる

5.1黒部川横断

5.1仙人沢渡渉

5月2日(4日目)
〈行程〉05:30Co1530m〜ガントウ尾根〜07:50池の谷平小屋〜09:40近藤岩〜12:30長次郎谷出合〜13:30八ツ峰Ⅰ・Ⅱ峰中間ルンゼ〜16:30八ツ峰Ⅰ・Ⅱのコル着&幕
ガスの中を歩き始める。新雪の量は場所により5~20cmといったところか。うまく歩けば気にならない。先頭を交代しながらペース良く進む。近藤岩到着が想定よりも早かったので、真砂沢ロッジをパスし、八ツ峰Ⅰ・Ⅱのコルを目指すことにした。剱沢を登り、長次郎谷出合で、急登に備えて休憩を取る。長次郎谷を降りてきたスキーヤーと会う。人と会うのは初日以来。剱沢にも複数の人が確認できた。
トポによると、Ⅰ・Ⅱのコルへあがるルンゼは、顕著な岩小屋が目印らしい。もちろん雪でわからず、地形図とヤマレコを確認して登っていく。まぁまぁな斜度で、ふくらはぎがすぐにパンプするため、少し登ってはレストを繰り返す。より斜度のある最後の標高差150mは、重荷なのでザイルを出し、コンテであがる。かなり疲れており、パートナーに前を任せる。
やっとの思いでⅠ・Ⅱのコルにつくが、ナイフリッジでテントを張れるようなところではない。トポにはⅠ・Ⅱのコルで幕営可能と書いてある。もしかして、今いるところはⅡ・Ⅲのコルか? 隣のピークは無名ピークではなくⅡ峰か? 時間はすでに16:30で体力は使い果たしている。リッジを大工事して張れるようにするには、2時間以上かかりそうだ。前後のコルに移動するにも、かなりの労力を必要とするのは間違いなく、行ったとして、そこが容易に張れる状況かは不明だ。これはかなりピンチ。(下山後に調べたが、このときいた場所はⅠ・Ⅱのコルだった。)
リッジ大工事と決断しかけたときに、小さなシュルンドを見つけた。奥が見えないほど深いが、硬い雪を押し込めば、何とかなりそう。幅は、上部を削ればテント分をギリギリ確保できそうだ。上部の雪はスラブに乗っているだけだが、安定しており、落ちてはこないだろう。15mほど上のハイマツにザイルをフィックスさせ、大工事に取り掛かる。氷化している層があり、スコップだけでは形成できない。のこぎりを持ってきて本当に良かった。19時頃ザイル着用でテントイン。電波なし。
ここまでは、アプローチだったようなもので、明日が本山行のメイン、八ツ峰登攀である。軽量化のために、余りそうな食料を大量に消化。明日はゆっくり出とし、しっかり寝て回復することにした。カイロも豪華に使い、23時頃に就寝。

5.2ガスのガンドウ尾根

5.2劒沢をあがる

5.2長次郎谷

5月3日(5日目)
〈行程〉07:30Ⅰ・Ⅱコル〜八ツ峰主稜登攀〜17:30八ツ峰の頭着&幕
04:30起床。雲一つない。予報だと終日晴天のはずだ。すると、ソロが登ってきた。今からでは、先に出発することはできないし、先に行けたとしてもソロには抜かれる。トレースなしの八ツ峰は、悲しいが諦めなければならないようだ。正直、疲れもあるので、安堵感がないと言えばウソだ。軽く会話をして先に行ってもらう。
足場が良くないため、慎重に撤収し、0730歩き出し。終始アンザイレンで、コンテとスタカットを判断しながら、延々と続くナイフリッジと雪壁を処理していく。Ⅱ峰、長次郎谷側に25m懸垂。Ⅲ峰、長次郎谷側に20m。Ⅳ峰、三ノ窓側に20m、Ⅴ峰、長次郎谷側に40m×2回、5mm60mの細引きと連結。Ⅴ・Ⅵのコルまでに、懸垂は5回、かなりの時間を消費した。
そして、この先がどう見ても長い。すでに時間は13時。ここで泊まることも一瞬頭をよぎったが、本日の前進距離としてお粗末すぎるため、先へ進むことにした。この先、どれくらいのペースで進めるのか、幕営可能地はあるのか、かなり不安だった。写真を撮る時間も惜しみ、先を急いだ。Ⅵ峰は、下部岩登り、上部は長い雪壁、小ピークで懸垂(方向と距離忘れた)、Ⅵ峰で懸垂(忘れた)。Ⅶ峰は、長いトラバースとナイフリッジ、下降点には先行ソロのスノーボラードがあった。雪はさらに緩んでおり、非常に怪しい。時間は15:40で、この先、明るいうちに幕場を見つけられるのか不安しかない。スノーボラードをやや深くし、ザイルを新しい面に沿わせる。バックアップのスノーバーを設置して、三ノ窓側に優しく20m懸垂。パートナーが不安そうだったので、スノーバーは残置で降りてもらうことにした。昨日と逆で、パートナーがバテおり、私が元気だ。交代でやってきたが、残りはすべて私のリード。Ⅷ峰、岩登り、三ノ窓側20m懸垂。八ツ峰の頭、岩登り。ピナクルで確保し、18:00パートナーを迎える。そして、頭には1時間程度の工事でテントを張れるスペースがある。
八ツ峰完登と幕場確保の喜び(末端からではないが、ここでは完登と言わせてもらう)。ピナクルにザイルをフィックス。夕陽で美しい山々と富山の町を堪能しながら工事をして、20時ごろテントイン。残しておいた僅かなウイスキーで祝杯。au、ドコモともに電波が入る。

5.3ⅠⅡのコル幕営状況

5.3コンテで進む

5.3スノーボラード

5.3八ツ峰の頭でパートナーを迎える

5.3八ツ峰の頭で整地するパートナー

5月4日(6日目)
〈行程〉07:30八ツ峰の頭〜10:30剱岳〜早月尾根〜13:10早月小屋〜16:10馬場島着
04:00起床。雲一つない快晴。朝焼けで綺麗な景色を堪能する。今日は、時間が十分にあり、危険箇所もほとんどなく気が楽だ。まずは、頭から2発懸垂。クライムダウンもできなくないが、時間もあり、疲労度を考慮。長次郎のコルからは、長次郎谷からの多数の登山者と合流、滑落に巻き込まれたくないので急登で1ピッチスタカット。その後、緩斜面を経て剱岳山頂。この上ない達成感を感じる。パートナーと記念撮影。大休止して、歩いてきた尾根を眺める。あとは、心を無にして、標高差で2200m下るだけ。早月尾根はCo1500mでアイゼンを外した。馬場島へ下り切り、パートナーと握手。有名な「試練と憧れ」の石碑の前で記念撮影をする。タクシーで上市駅前に移動。ダイソー、しまむら、アルプスの湯、電車で富山駅へ、居酒屋、ステビバ。始発の新幹線で帰京。帰ると自宅のバラが満開。パートナーに感謝。

5.4赤く染まる剱岳

 

 

 

 

 

5.4劒岳登頂直前

5.4試練と憧れ

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